神久保家へようこそ 「エキセントリック・マミーズ」
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| 神久保壬久(かみくぼ みく) | … | 女・十代でデビューした漫画家・26歳 今年春男児出産。 |
| 橘 駒子(たちばな こまこ) | … | 女・27歳。壬久の姉。 ラジオのパーソナリティ・元声優。 今年春女児出産。 |
| 江田 亨(えだ とおる) | … | 男・53歳。声優。 駒子と壬久の実の父。 |
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○ 神久保家玄関
壬久「いらっしゃい、駒ちゃん」
駒子「お邪魔しまーす。あーもう重い……今日あっちゃんいないの?」
壬久「うん、秋葉原散策で夕方まで戻らない予定。しかしよく寝てるねえ。
さくらちゃん」
駒子「昼は寝るのよ。夜はギンギラパラダイス」
壬久「うちも同じだよ……」
駒子「でもあんたのとこはいいじゃない。面倒見てくれる人多いんだから。で、
淳久(あつひさ)くんも今寝てる?」
壬久「うん。アプルの抱き枕が添い寝してる(笑い)」
駒子「……オタクに育ったらどうすんの。てかそんな物どこで売ってたの」
壬久「去年の冬コミで売られたやつだよ。まあ上がって」
駒子「誰がんなもの買ってきたのよ!」
壬久「買ったんじゃないよ。もらったの」
駒子「……おい原作者、版権を良く許したね」
壬久「いや面白そうだったし、作った人が駒ちゃんの結婚記念だって
言い張るもんだから」
駒子「……個人的にはすっごいイヤなんだけど」
壬久「ごめんごめん」
駒子「で、当然何らかのリベートはあるでしょ?」
壬久「そりゃもちろん。天馬さんに既に謹呈済み」
駒子「……あの野郎どこに隠し持ってんだ!!」
壬久「ああ、そんな大声出したらさくらちゃんが起きる」
駒子「……はあ、まッたくもう」
壬久「まあ天馬さんは枕使う必要ないんだしさ(笑い)」
駒子「私がいるんだから、使われちゃたまんないわよ」
壬久「まあ安心してよ。版権を許可した理由は別にもあるんだって。
ヘンな機能はついてないわけよ。本当に純粋な抱き枕だから」
駒子「あ、なんだ。そういうこと」
壬久「ほらほら、見て」
駒子「おー、あつひさくん、かわいいねえ。こういうかわいい子と添い寝
出来るんならまんざらでもないなあ。声の主としては」
壬久「お昼寝マット出すから、さくらちゃんも寝かせたら? ここ座ってて」
駒子「あ、うん。じゃあお願い。……しかしいい部屋見つけたね」
壬久「このマンション、編集部の人が探してきてくれてさ」
駒子「日当たりも眺めも良いし、新築だっけ?」
壬久「うん。部屋数も多いから仕事には差し支えないし」
駒子「仕事部屋を他に借りずにすんで良かったね」
壬久「そう言えばまだ駒ちゃんトコの新しい部屋には行ってないね」
駒子「あ、そっか。でも、うちまだ散らかってるからなあ」
壬久「出産直前に引越しちゃったからしょうがないよ」
駒子「天馬も忙しいしね」
壬久「ところでいつから仕事に復帰する予定?」
駒子「産まれたらすぐと思ってたけど、やっぱり半年は面倒見たいから
秋頃かな」
壬久「そうだよねえ」
駒子「壬久は大変だね。退院してすぐだったでしょ、仕事」
壬久「そりゃ、連載に穴はあけられないから」
駒子「デビューしてから今まで休載したことないんでしょ? すごいね」
壬久「休みたいときは事前にお休み貰ってるから。突発的な休載がない
のはやっぱり自慢でもあるなあ。はい、お昼寝マット準備出来たよ」
駒子「ありがと。よいっしょっと……さくら、大人しく寝てなさいよ。あ、
そうそう。渡すの忘れてたんだけど、お父さんから預かりもの」
壬久「え、なになに」
駒子「鞄から出してくれる?育児用品レンタルギフトのパンフレット。
子供が三歳になるまで一年間に12品目まで借り放題なんだって」
壬久「月にいくらなの?」
駒子「レンタル料は全部お父さん持ち。育児用品あんまり買わないように
言われてたでしょ」
壬久「うん。だからうちはとりあえず必要なベビーベッドだけ買ってた」
駒子「それはうちも。後はホラ、とりあえず乳児用のチャイルドシートとか
ベビーバスなんかを借りようかなあって思って」
壬久「ああ、いいなあ。こういう気遣い嬉しいよね」
駒子「お父さん一生懸命だよ。知らなかった分を取り戻そうとしてるみたい」
壬久「慌てなくっても、いいのに」
駒子「まあ、いいんじゃない。結構楽しそうだよ」
壬久「お父さんが楽しんでるならいいか。したいようにさせておけば……
でも今ゲーム関係の仕事で大忙しだよね。身体大丈夫かな」
駒子「今まで目立つ役って、渋めの悪役キャラとか年齢高めのキー
パーソンとかぐらいだったのに、急に若い子に人気出たよね」
壬久「かっこいいもんね、あのキャラ。シュベールだったかな」
駒子「お父さんてこんな役も出来るんだって、驚いたよ」
壬久「アシさんの話によると冬コミで既にやおい本が出てたらしいよ(笑い)」
駒子「マジで? 攻め? 受け?」
壬久「ネット見る限りまだ攻めが一般的かな。でも多分そのうち受けに回さ
れると思う」
駒子「うわー、聞きたくない(笑い) そのうちボーイズラブのドラマCDにも
出るんじゃないの」
壬久「特に最近、お父さん仕事選ばなくなったからね。可能性はあるなあ」
駒子「もうちょっとプライド持って欲しい。二人も孫がいるんだから」
壬久「大丈夫。楽しくない仕事はやらないって言ってるから」
駒子「それならいいけど」
壬久「まあよっぽどのことがあったら、シュベール受けの本でも読ませて
ショック療法とか(笑い)」
駒子「そこまでしたら心臓止まるかもよ」
壬久「それはちょっと困るなあ」
駒子「あ、でもちょっと待て。確か洋画に声当ててた時にゲイの役やった
ことあったような」
壬久「え、どの映画?」
駒子「ガラスのエデンとかいう……タイトルだったかな」
壬久「見た! それ映画館で見た! 吹き替えじゃなかったけど。
温室でのかなり長い濡れ場あったよね」
駒子「そうそうそう。あれR指定だったはず」
壬久「マジかー、あれ未だに同人誌でダブルパロに使われてるよ」
駒子「それこそまた大流行するんじゃないの? 受け役だったからさ」
壬久「……お父さん」
駒子「あれもやっぱりお父さんからすれば面白い仕事だったんだろうなあ」
壬久「だとしたらボーイズラブなんて屁でもないんじゃあ」
駒子「だろうな……」
壬久「なんというか。娘としては複雑……気分転換にお茶いれてくる」
駒子「いってらっしゃい。あ、その間にオムツ変えてていい?」
壬久「いいよ。バルコニーにごみ箱あるから、汚れてるのはそこにいれて
おいてくれれば。あ、でもブツはトイレに流してね」
駒子「うん、分かったー」
○ キッチン
壬久「はあ、同人誌の話は笑って聞いてられたけど……おとーさんてば
ゲイ役経験済みだったのか。なんかリアルで経験済みのように錯覚し
てしまいそうでイヤだなー」
SE:携帯の鳴る音
壬久「お? 旦那からメール……ええっ!?」
○ リビング
駒子「うわー、いいうんちだね。さくら。くちゃいくちゃい」
壬久「駒ちゃん駒ちゃん! 大変!!」
駒子「ど、どうしたの」
壬久「お父さんが……秋葉原で開かれてた声優イベントでステージから
落ちたって」
駒子「いつよ!」
壬久「今、たった今。あっちゃんからメールが」
駒子「それで怪我は!?」
壬久「足を折ったらしいって……」
駒子「病院わかったらすぐ行こう!」
壬久「うん。お茶どころじゃないよね……準備しなくちゃ」
駒子「あ、でもオムツ変えてしまわなきゃ。で、子供たちどうするの?」
壬久「あー、どうしよ。病院から家に戻ってきて、まだ一度も連れて出た
ことないんだよ〜」
駒子「うちは外出しまくりだけど、本当は良くないんだよね……まして
行き先は病院だもんね」
壬久「うう、どうしよう。乳児を誰かに預けるのは気がひけるし」
駒子「待って、携帯が使用可能ってことはもしかして捕まるんじゃない?」
壬久「あっちゃん?」
駒子「そうよ。行脚中のあんたの旦那を召還できるかも」
壬久「……いちかばちかやってみるわ」
駒子「この非常時にまた携帯切ってるようだったら、一発殴ってやる」
壬久「私は1ヶ月の外出禁止を言い渡す。……えい!」
駒子「うちも天馬に連絡しとこ」
壬久「あ! 嘘。通じた! もしもし? あっちゃん」
駒子「……天馬! 携帯の電源を切るなーーーーっ!!」
○ 病院内・ナースステーション
壬久「すみません、江田亨の病室は? あ、私たち娘なんですけど」
駒子「503号室ですね。有難うございます。面会は可能ですか?」
○ 病室
壬久「お父さん!!」
駒子「足大丈夫なの? お父さん」
江田「駒子〜、壬久。すまんな心配かけて」
壬久「やっぱりギブス……吊ってなくて大丈夫なの?」
江田「うん、ヒビが入っただけなんだ。とりあえず大事を取って1日だけ入院と
いうことに」
駒子「ステージから落ちたってあっちゃんに連絡受けて、吃驚したんだからね」
江田「悪かった。ちょっとはしゃぎ過ぎて」
壬久「声優イベントに出るって珍しいよね、お父さん。もしかしてあのゲーム
関係のイベント?」
江田「ああ、ゲリラライブみたいなね。僕等も話を聞いたのは急で……でも
人気が出た、って言われてるのを肌で感じてみたくて参加したんだよ」
駒子「それはいいけどさ、年考えなさいよね」
壬久「そうだよ。お父さんにはもう孫が二人もいるんだから」
江田「申し訳ない」
壬久「あ、パンフレットありがとう。でもお父さんが仕事出来なくなったら、どう
するつもりだったの」
江田「う……。そういえばさくらとあつひさは連れて来てないのか? まあ病院
だからなあ」
壬久「婿養子が家で面倒見てるよ」
江田「敦也くんが、そうか。そういえばステージ近辺で彼らしき人を見たような」
壬久「たまたまあっちゃんがステージ見てたからいいようなものを、プロダクション
経由で連絡入ってたらもっと来るの遅かったよ。もうお父さん一人じゃないんだ
から自覚してよ」
江田「本当にすまなかった。それでなくても片腕がこんなだから……バランスが
悪いんだと言うことを分かってるはずだったんだが」
駒子「そうよ。若い子に騒がれて嬉しいのは分かるけど」
江田「……返す言葉もない」
壬久「で、全治どのくらいなの?」
江田「全治1ヶ月。しばらくはステージを自粛するよ」
駒子「出来れば永遠に自粛してて欲しいわ」
江田「駒子……」
壬久「さすがにそれは無理でしょ、駒ちゃん」
江田「今度ゲームのサントラの発売があって、それにあわせてまたイベントがある
んだ……もっとも、もう今度みたいな無茶はしない」
駒子「当たり前!」
壬久「駒ちゃん、天馬さんの携帯通じなかったからってお父さんにやつあたりしな
くても。仕事中だったんだし」
駒子「うっさい! あ、そうだ。お父さん、コレを機会に携帯くらいは持ってよ」
壬久「ああ、それがいいかもね」
江田「そうだな……どこのメーカーがいいんだ?」
壬久M「お父さんの怪我がたいしたことなくて、本当に良かったと思う。
春に生まれた二人の孫のためにも、ずっと元気でいて欲しい。私たちの
お母さんの分まで。
それにしても、駒ちゃんの切れっぷりってどうやらお母さんにも似たような
とこがあったらしい。お父さんに聞いて驚いた。おだやかな顔しか知らな
かったから……。
でも、だからなのか。私達に責め立てられて凹みつつも、お父さんはどこ
か嬉しそうだ。
やっぱり私達には、彼女の血が脈々と流れているのだろう。
だけど、私はそんなに切れたりしてないと思うんだけどなあ」
駒子「あんたは自覚ないだけでしょ! そういうとこお父さんそっくりよね!!」
BACK END